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 Review No.003  for CD
 Hans Rott (1858-1884)
 Symphonie Nr.1 E-dur
 ARTENOVA BVCE38080 & Hyperion HELIOS CDH55140
ハンス・ロット (1858-1884)BVCE38080
交響曲第1番ホ長調 (1878)
セバスティアン・バイグレ指揮ミュンヘン放送管弦楽団
(録音:2003年12月〜2004年1月、Studio 1,Bayerischer Rundfunk,Munchen)
[BVCE38080 ARTENOVA]
ゲルハルト・ザムエル指揮シンシナティ・フィルハーモニア管弦楽団
(録音:1989年3月、St.Barnabas’s Church,London)
[HELIOS CDH55140 Hyperion]

ハンス・ロット <100年間忘れられた作曲家と驚きの交響曲>
作曲家ロットはウィーン音楽院でブルックナーに学び、マーラーは同門で2歳下の友人でした。1878年、卒業生を対象とした作曲コンクールに交響曲第1番の第1楽章を提出し、落選。。1880年、全曲のスコアをブラームスに見せたところ、酷評され、盗作に近いことも言われたりしました。また当時ウィーンフィルの指揮者だったハンス・リヒターにもこの曲の演奏を働きかけ、理解は得たのですが、結局、会う約束をすっぽかされてしまいます。そうした冷たい反応によりロットは精神的に病んでいきます。列車の中で乗客が煙草に火をつけようとしたところ、「ブラームスがダイナマイトを仕掛けている」とピストルを突きつけ、精神病院に収容されてしまいます。その4年後の1884年、結核で、わずか26歳の生涯を閉じたのです。それから100年後、マーラーの青年時代を調べていたイギリスの音楽学者バンクスはマーラーが残した証言を通してロットを知り、その草稿の中からこの交響曲第1番を見つけだしました。そして1989年3月、ザムエル指揮シンシナティフィルが初演し、初録音の後、近年は欧米で盛んに演奏、録音が行われています。日本でも2004年11月に沼尻竜典指揮日本フィルにより本邦初演されました。この曲がブレークしたのは2004年、ここに取り上げたARTENOVA盤CDの発売によるものでした。1時間弱の大作で、初めて聴いた時はやや冗長な感じがしたのですが、あたかもブルックナー、ワーグナー、ブラームスの曲かと思うようなメロディーラインが散りばめられ、魅力に満ち満ちていました。そして驚きの頂点は、この曲の後に作曲されたマーラーのいくつかの交響曲によく似たところが何箇所も現われることです。CDH55140

<ブルックナー、ワーグナー、ブラームスをパクり、マーラーにパクられるロットの音楽>

第1楽章冒頭からトランペットにより師であるブルックナー風の音型が出て来ますが、重厚難解ではなく、この軽やかさは彼独自のものと言えるでしょう。この親しみやすい叙情的な音型は第4楽章で回帰されます。オルガン奏者として、バッハを尊敬していた彼はコラールや対位法的書法をこの曲に散りばめ、独特の趣を第1楽章と第2楽章に与えています。その第2楽章はみずみずしい叙情に溢れています。第3楽章のスケルツォでは楽しげなワルツをさまざまに変化させ、ここにはマーラーがこの曲よりも後に作曲した第1番「巨人」の第2楽章、第2番「復活」の第3楽章や第5番の第3楽章に表れる音型がいくつも出てくるのです。第4楽章でもひき続きマーラーの交響曲に出て来るモティーフやワーグナー風のメロディーが奏され、その後に出て来る主部の主題がブラームスの交響曲第1番第4楽章主部の主題によく似ているのです。この部分が当時47歳のブラームスの気持ちを逆なでしたことはまちがいありません。ロットはブルックナーを師匠とし、ワグネリアンでもあったため、反ワーグナー派の首領であるブラームスにこの曲を見せ、評価を得ようとしたのは自分の作品への自信だけでなく、極貧に喘ぎ、切羽詰まった状態だったからなのでしょうか。ロットは、その当時の音楽界を二分していた派閥のどちらをも含合するものとして、この作品を書いたとも思われます。誰が聴いてもすぐ分かる、当時発表されて間もない大作曲家のメロディーに似た旋律をパロディー風ではなく、堂々と使用するあたり、常人とは違うところです。そして我々はロットの音楽について、この曲を初めて聴くずっと前から、マーラーのいくつかの交響曲によって既に知っていたことになります。マーラーは1900年に次のように述べています。「ロットは自分と同じ土から生まれ、同じ空気に育てられた同じ木の二つの果実のような気がする。」

<2つのCDを比較して>

この2種類のCDはそれぞれ特色があり、ロットの交響曲を別な角度から聴くことができました。バイグレとミュンヘン放送管は弦、管、打楽器のバランスがよく、やや速めでモダンな印象を持ちました。24ページにわたる日本語訳の解説書が付いていて、ロットのこと、交響曲第1番のことが詳細に述べられているのは文献として貴重です。一方、この曲を世界初演したザムエル指揮シンシナティフィルの世界初のCDは、弦楽器が揃っていない等一流とは言えないオケなのですが、ティンパニの響きが効果的で、金管も力強い響きの演奏、録音です。そして何よりもブルックナー、ワーグナー、ブラームスそしてマーラーの音楽が際立って聴こえて来て、最後まで飽きさせない味わい深い演奏だと思います。このCD解説はロットを100年ぶりに見いだした音楽学者バンクスによるもの(もちろん英語)です。
   Hans Rott
Hyperion CDH55140 SONY&BMG - ARTENOVA 
 
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