ミスター・アートのコンサート&CDレビュー♪
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 Review No.017  for Concert
 2006.07.21 18:45   Aichi Arts Center Concert Hall, Nagoya
 Nagoya Philharmonic Orchestra - MOSHE ATZMON
                                              No.327 Subscription Concert
 Emi Sawahata, soprano     Michiko Hayashi, mezzo-soprano
  Green Echo     Nagoya Chor Harmonia
出演:  モーシェ・アツモン指揮 名古屋フィルハーモニー交響楽団 (第327回定期演奏会)

 澤畑恵美(ソプラノ) 林美智子(メゾ・ソプラノ) 合唱: グリーン・エコー/名古屋コール・ハーモニア

演奏会場:

 愛知県芸術劇場・コンサートホール

プログラム:  グスタフ・マーラー作曲 交響曲第2番ハ短調「復活」
                       Gustav Mahler: Symphonie Nr.2 c-moll "Aufersthhung" "Resurrection"
<この夏、「復活」一色>
この7月下旬、名古屋はマーラー「復活」一色でした。7月20日には小澤さんの病気が癒え、この曲を振って”復活”を果たし、マスコミの話題になっていました。翌21日、22日にはアツモンが名古屋フィルの定期演奏会で同曲を取り上げ、3夜連続の「復活」と相成りました。小澤さんの「復活」のチケットはすぐに売り切れて手に入らず、名フィルとその名誉指揮者アツモンによる「復活」を聴きに行くことにしました。

<合唱団の構成と大編成オーケストラ>

会場に入ると、合唱団は既にパイプオルガン前の観客席・・いわゆるP席に座っていました。真ん中に男性コーラス60人ほど、その両側に女性コーラスが約80人という陣容でした。オーケストラは金管と打楽器がずらりと並んで壮観でした。ホルンは最初、ステージ上に6本並んでいましたが、舞台裏のバンダのための4本が曲の最後にはステージ上で合流して2列計10本が並びました。打楽器もティンパニ2セットにバスドラム、小太鼓、グロッケンシュピール、タムタム、鐘‥と舞台上に所狭しと並んでいました。
「亡き子を偲ぶ歌」作曲当時のマーラー
<マーラー「復活」の誕生>

マーラーは、ブダペスト歌劇場の指揮者をしていた1888年から第2交響曲のスケッチに取り掛かっていましたが、第1交響曲の完成とその初演や歌劇場の仕事などでなかなか作曲は進みませんでした。翌1889年はマーラーにとって悲劇的な年となりました。2月に父親、10月には母親を亡くし、年長者として妹や弟の面倒をみなくてはならず、すぐ下の妹もこの年に亡くなってしまいました。こうした不幸の連続は、構想中の第2交響曲の内容に大きく影響したと考えられています。ハンブルク歌劇場の首席指揮者の地位を得たマーラーはハンス・フォン・ビューローから指揮者としては絶大な支持を受けましたが、そのビューローが1894年に病没します。その葬儀の時に響いてきた少年合唱隊によるドイツの詩人クロプシュトックの「復活」の賛歌は、遅々として進まなかった第2交響曲の終楽章に相応しい歌詞としてマーラーに啓示を与えました。その前の年の夏に、第2〜4楽章までの管弦楽総譜が書かれていました。1895年12月、マーラー指揮のベルリン・フィルによって全5楽章の初演が行われます。第2交響曲はハ短調で始まり、変ホ長調で終わります。古典派から中期ロマン派の頃の交響曲では、あまり見られない調性の移行だそうですが、それは「死から復活へ」という一貫した流れと結びついています。この調性の変化はフリーメーソンの儀式の特徴を思い起こさせます。(レビューNo.16参照

<第1楽章「あくまでも厳粛にして荘重な表現で」>

この楽章はトレモロに導かれ、低弦が力強い第1主題を奏して印象的に始まり、ヴァイオリンによる慰めるような第2主題を経て、呈示部は葬送行進曲で結ばれ、長大な展開部へ移って行きます。この演奏会では、初めのダブルベースが少しラフでしたし、呈示部や展開部ではトランペットの濁ったような音やホルンの音程の外れが気になりました。それも曲が進むにつれ、集中力が増してきたのか、気になるところはなくなってきました。展開部における破局に至るかのような激しさには圧倒されました。コーダでは葬送行進曲が再現され、静かに消えそうになった時、突如半音階風に下降して、この楽章を閉じます。第1楽章はこれだけでも完結した側面を持っていて、マーラーは次の第2楽章との間は少なくとも5分間の休みを置くように指示していますが、この演奏会では、オーケストラのチューニングの時間を含めても2〜3分ほどの休憩でした。
<第2楽章「きわめて気楽に、けっして急がないで」>
この楽章ではレントラー舞曲が用いられて、弦による楽しげな主題が出てきます。ヴァイオリンが細かい動きのスケルツォ風の旋律(ベートーヴェンの第九のスケルツォに似てると思いますが‥)を奏し、静かな第1トリオの後、金管を中心に活発で色彩的な第2トリオが続き、弦のピチカートの後、ハープが消え入るかのようにして終わります。第2楽章が終わったところでソプラノとメゾソプラノが登場。指揮者を真ん中に聴衆から見て左側に淡いブルーのドレスのメゾソプラノ、右側には淡いピンクのドレスのソプラノと優雅な色調は視覚的に好ましいものでした。
<第3楽章「おだやかに流れるような動きで」>
この楽章はマーラーの歌曲集「子供の不思議な角笛」の第1曲《魚に説経するパドヴァの聖アントニウス》の旋律によるもので、教会に人がいないので魚に向かって説経を始めると、魚たちが集まってきたという寓話に基づくものです。ティンパニの強打に始まり、木管や打楽器のリズムの中からヴァイオリンの流れるような主題が現れます。それがいろいろな楽器で扱われていくうちに次第に陰を帯びて来ます。トランペットの憂いを持った音は魅惑的でした。そして明るく雄壮に金管が鳴り響き、不安でグロテスクな様子を示し、静かに切れ目なく次の楽章へ続きます。
<第4楽章:原光「きわめて荘厳に、しかし素朴に」>
前楽章のホルンとコントラファゴットの響きを受け継ぎ、メゾソプラノが「おお紅いバラよ・・」と歌い出します。マーラーの歌曲集「子供の不思議な角笛」の第12曲《原光》を転用したものです。遠くからトランペットの吹くコラールが響いてきます。木管やヴァイオリンのソロやハープと絡み、短いながらも美しく、天国・・そして死への憧れが歌われます。悲劇的な人生が第1楽章で示され、第2楽章で開放された素朴さの中の人生、第3楽章では衝動的な混乱の中の人生が描かれ、この第4楽章に於いて、こうした人生を克服した後、人間には死への憧れが迫ってくるという構成が明らかとなります。この演奏会では、メゾソプラノ独唱とトランペットとの掛け合いのところで、トランペットの音が大きすぎて、独唱の声がよく聞こえず、音量バランスには問題がありました。
<第5楽章「スケルツォのテンポで荒々しく放射するように」>
ここは低弦による大地の鳴動で始まります。トロンボーンやトランペットで第1主題が奏され、第2主題は6本のホルンにより静かに示されます。トロンボーンにより復活の主題が姿を現し、次第に緊張感を増しながら盛り上がりと鎮静を繰り返します。第2部ではそれまで示された主題が様々な手法により展開され、見事なオーケストレーションによって「最後の審判」のカオスの世界が描かれてゆきます。第3部は舞台裏から金管が響き、フルートとピッコロがナイチンゲールの鳴き声を模し、静かに合唱が無伴奏でクロプシュトックの「復活」の賛歌を歌い始めます。「怒りの日」の後の荘厳な夜明けであり、メゾソプラノとソプラノ独唱も加わり、ハープに促されて合唱が「生者は滅び、滅びた者は必ず蘇る・・」と歌います。美しい二重唱の後、再び合唱が加わり、次第に熱気を帯び、「生きるために死す・・そして必ず復活するであろう・・」と力強く歌われます。最後はオルガンが加わって、鐘が打ち鳴らされ、壮大なクライマックスを迎え、輝かしいコーダで曲を閉じます。

<ロットの交響曲第1番から得た霊感>

この曲はナマの演奏でもハンス・ロットの影がちらほらしているのがよくわかり、たいへん興味深いものでした。この「復活」の第3楽章はロットの交響曲第1番第3楽章とその構成、雰囲気がたいへんよく似ています。さらに「復活」の第5楽章でのバンダが奏する旋律については、ロットの交響曲第1番第4楽章でホルンやオーボエのソロとその後の展開と双子のように似ています。マーラーと青年時代に寝食を共にし、同じ空気を吸いながら、早逝してしまったロット。彼が既に10年ほど前に書きあげていた交響曲第1番からの霊感が、このマーラー「復活」にはこめられているように感じます。(CDレビューNo.3参照
Moshe Atzmon
<この演奏を聴いて感じたこと、思ったこと>

トランペットとホルンが活躍し、トロンボーンにもソロがあり、金管楽器奏者には気が抜けない大曲ですが、演奏する充実感はたまらないものだと思います。舞台裏に配置されたバンダの音が遠くから聞こえるように、右側の所が開いたりしましたが、何度も中央のバスドラムの後ろの木壁が開きました。これまで幾度となくこのホールで聴いてきましたが、初めて見たこの光景には驚きました。音響の点からは望ましいかもしれませんが、視覚的には目につく真ん中の所が何度も開閉するので、うっとうしく感じた人もいることでしょう。打楽器は思い切りがよく、実演ならではの凄まじいばかりの迫力でした。途中からバチを持った楽員が加わって、2セットのティンパニを3人でたたいていました。弦楽器・・特にヴァイオリンの柔らかな音は印象的で、トゥッティでも金管に負けずに響いていましたし、全体を通してメロウな響きを聴くことができました。合唱については、技術的なことはわかりませんが、感覚的には可もなく不可もなしというところでしょうか。(アマチュア合唱団の人が言うには「復活」を歌うのは難しいとか‥) アツモンの指揮は鮮烈さや鬼気迫る緊迫感こそありませんが、スケール感や情感は感じられ、安心して聴いていられました。このコンビの演奏会にこれまで何度も足を運び、アツモンの誠実な演奏には裏切られることはありませんでしたが、もうひとつ突き抜けた個性がなかったため、メジャーになりえなかったように思います。

<パネル展示に見る名フィル、過去の演奏会>

そのアツモンと名フィルが1988年に名古屋市民会館で「復活」を演奏した時の写真が、ロビーにパネル展示されていました。独唱者には伊原直子の名前があり、会場が異なるためか今回の配置とは違っていて、合唱の前に独唱者が並んでいました。他にアツモンと名フィルが取り上げたマーラーの交響曲第5番と第9番の演奏会のパネルもあり、その時の演奏を聴いた人にとっては、想い出深いものだったでしょう。また先頃亡くなった岩城宏之と名古屋フィルとの最後の定期演奏会(岩城さんには珍しく交響詩「タピオラ」や交響曲第5番等オールシベリウスプログラムでした)の写真もパネルで展示されていて、その演奏を聴いた小生には非常に感慨深いものがありました。   (2006.09.05 UP)

グスタフ・マーラーの墓
《参考にしたCD》


♪グスタフ・マーラー: 交響曲第2番ハ短調「復活」

☆ ラファエル・クーベリック指揮 バイエルン放送交響楽団&合唱団
 エディット・マティス(ソプラノ)、ブリジット・ファスベンダー(メゾ・ソプラノ)
 [audite23.402]

☆ オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団&合唱団
 エリザベート・シュワルツコップ(ソプラノ)、ヒルデ・レッセル=マイダン(メゾ・ソプラノ)
 [TOCE‐6089 COM 7 696622]

♪ハンス・ロット: 交響曲第1番ホ長調

☆ レイフ・セーゲルスタム指揮 ノールショピング交響楽団
[BIS‐CD‐563]
 
 
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