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Review
No.018 for Concert
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2006.08.02 19:00 Aichi
Arts Center Concert Hall, Nagoya |
PMF Orchestra
2006 - Valery Gergiev
Pacific
Music Festival 2006 - Performance in Nagoya |
| Daniel
Matsukawa, Fagott |
| 出演: |
ワレリー・ゲルギエフ指揮 PMFオーケストラ 2006 (名古屋公演) |
ダニエル・マツカワ、ファゴット
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| 演奏会場: |
愛知県芸術劇場・コンサートホール
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| プログラム前半: |
モーツァルト作曲 ファゴット協奏曲変ロ長調Kv.191
Mozart: Konzert
für Fagott und Orchester B-dur Kv.191
ストラヴィンスキー作曲 バレエ音楽「ペトルーシカ」(1947年版)
Stravinsky: Pétrouchka
(ver.1947) |
| プログラム後半: |
チャイコフスキー作曲 交響曲第5番ホ短調作品64
Tschaikowsky: Symphonie
Nr.5 e-moll op.64 |
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<PMFオーケストラとは?>
PMFオーケストラはレナード・バーンスタインの提唱により若手音楽家を育成するため1990年に札幌で創設されたPacific Music
Festival のオーケストラです。世界各地からオーディションで選ばれた19〜29歳の若手演奏家が、毎年、世界を代表する指揮者や演奏者の指導を受け、その成果をPMFオーケストラの演奏会において披露してくれます。名古屋では昨年の万博記念演奏会(レビューNo.6参照)に続き、2回目の演奏会が開かれ、ペトルーシュカとチャイコフスキーの交響曲第5番をゲルギエフが振るとあって、期待を持って聴きに行きました。
<生演奏を聴いた後にわかったモーツァルト ファゴット協奏曲の魅力>
最初の曲はモーツァルトのファゴット協奏曲で、独奏はフィラデルフィア管弦楽団の首席ファゴット奏者ダニエル・マツカワでした。モーツァルトの最後の協奏曲はクラリネット協奏曲ですが、このファゴット協奏曲はモーツァルト最初の管楽器のための協奏曲になります。どういう事情でこの曲が生まれたかは明らかではありませんが、当時、音楽好きの貴族はチェロやファゴットを嗜んだので、注文を受けたのでしょう。その優雅で洗練された味わいにより古今のファゴット協奏曲の中で抜きん出た位置を占めており、とても18歳の作品とは思えません。3楽章すべて終わりの方にファゴットのカデンツァが現れ、技巧的なパッセージを 味わうことができます。1800人を収容するホールで、この地味な音色のファゴットを独奏として聴くと、音量も小さくて響かず、もうひとつ感興がわきませんでした。PMF室内プログラム主任の出番を設けるため、この曲がオーケストラプログラムに載ったのかなと推察しますが、こうして生で聴いてからCDを聴いてみて、この曲は何と魅力に満ちているのか遅まきながら気がつきました。特に第2楽章でのファゴットとオーボエ(特
に1970年代中頃までのウィーン・フィルのオーボエの音色!)の掛け合いは絶品です。
<「ペトルーシュカ」の成り立ちと楽器編成>
ストラヴィンスキーが「火の鳥」と「春の祭典」の間に作曲したバレエ音楽「ペトルーシュカ」は、当初ピアノとオーケストラのための協奏曲風な作品として計画されました。しかしディアギレフからバレエ音楽に書き改めるよう勧められ、1幕4場からなるバレエ音楽として1911年に完成し、パリのシャトレ座でのロシアバレエ団の公演、ピエール・モントゥーの指揮により初演されました。初版はフルート4本、トランペット2本にコルネット2本が加わったりする4管編成で書かれました。後にそれを改訂し、3管編成に縮小したものが1947年版で、今回はその版で演奏されました。編成が縮小されたとはいえ、モーツァルトのファゴット協奏曲の時とはうってかわって、ダブルベースが10本、チェロ12本で、大太鼓、小太鼓、ティンパニなど打楽器群がずらっと並び、ハープとチェレスタ、そしてピアノが加わります。チューバらしき楽器は2本用意され、ひとりの奏者が持ち替えて吹いていました。
<物語のあらすじ>
このバレエは1830年頃、帝政ロシア時代のペテルブルクの広場での謝肉祭を舞台とした人形芝居の物語です。主人公の道化人形ペトルーシュカ(ロシア農民に多いペーターという名前の愛称)は、バレリーナの人形に恋をしてふられ、ムーア人にいじめられ殺されてしまい、最後にペトルーシュカの亡霊が現われるというものです。
<第1場(謝肉祭の日‐手品師の芸‐ロシアの踊り)と第2場(ペトルーシュカの部屋)>
第1場はフルートのソロを皮切りに謝肉祭の市場の賑やかさが色彩豊かに描かれ、様々な楽器のソロで馴染みあるメロディーのロシア舞曲が出てきます。第1場の中間部と各場の繋ぎとして小太鼓とティンパニ(女性でしたが)のトレモロがあるのですが、意外に大人しく荒々しさに欠けました。第2場はペトルーシュカの心理状態がピアノ、クラリネットやファゴットで表され、ピアノの美しいデリケートな響きが印象的です。物語は恋こがれているバレリーナが入ってきて、ペトルーシュカが自分の思いを打ち明けるのですが、バレリーナは受け付けずさっさと出て行ってしまいます。ペトルーシュカの嘆きと絶望がクラリネットソロで表されます。

<第3場(ムーア人の部屋‐バレリーナの踊り‐バレリーナとムーア人のワルツ)>
第3場は音楽が面白い場面だと思います。「春の祭典」かと思うような荒々しいフレーズで始まり、映画「ジョーズ」の音楽(ジョン・ウイリアムズ作曲)にパクられたと思われる低弦がスタッカートのリズムを刻む不気味なフレーズが顔を出します。バレリーナが登場し、ここはトランペットのソロが大活躍するところです。バレリーナとムーア人が踊るところはヨーゼフ・ランナーのウインナワルツ「シェーンブルンの人々」の旋律からの引用です。ここでペトルーシュカが現れ嫉妬し、ムーア人とバレリーナを巡って争う場面になりますが、敗れて追い出されてしまいます。
<第4場(謝肉祭の日の夕暮れ‐子守女の踊り‐熊を連れた農夫‐ジプシーと陽気な行商人‐御者の踊り‐仮面‐けんか‐ぺトルーシュカの死‐警官と人形使い‐ぺトルーシュカの幽霊)>
管弦楽のトゥッティによる「謝肉祭の日の夕暮れ」の情景は、この曲の白眉と言えるところだと私は思っています。数ある演奏の中で光彩を放つスベトラーノフのライブCDは、非常にゆっくりとしたテンポで、あたかも眼前に繰り広げられる絵巻物であるかのようにこの場面を見事に表わしています。ここをゲルギエフはどういうテンポでいかに表現するか大変興味がありました。残念ながら他の多くの演奏と同じく速めのテンポでさっと流し、期待どおりとは行きませんでした。しかしこの後、終始前へ前へと向かうパワーのある演奏には圧倒されました。いちばん印象に残ったのは「ジプシーと陽気な行商人」の場面です。ここでのうねるような弦楽器群のボウイングはバトン無し(指揮台も無し)で指揮するゲルギエフの腕とあたかも糸で結ばれているかのようにびったり合っていて、動画を見ているような光景でした。金管群は、その鋭い音が、時々耳にキンキンすることや、全奏での濁った音が、最初のうちは気になりましたが、「御者の踊り」「仮面」では覇気のあるすばらしい演奏を繰り広げてくれました。物語は群衆の踊りがクライマックスに達した時、ペトルーシュカはムーア人に追われて飛び出し、剣の一撃で死んでしまいます。人形使いがその屍を引きずって行くと、トランペットが甲高く不気味に吹かれて、ペトルーシュカの幽霊が現れ、最後は弦のピチカートにより静かに曲は閉じます。見事な演奏に盛大な拍手が送られ、特に上手いソロを聴かせてくれたトランペットは大喝采を浴びていました。「ペトルーシュカ」は「春の祭典」の陰に隠れて、あまり話題には上りませんが、PMFオーケストラによる若々しく溌剌とした実演に接し、この曲の素晴らしさを再認識しました。ところで演奏会で聴くバレエ音楽もいいのですが、一度バレエを見ながらこの曲を聴いてみると、もっと楽しめるかなと思いました。
<チャイコフスキー 交響曲第5番でのゲルギエフの表現は‥>
後半のチャイコフスキーの交響曲第5番では打楽器群が抜けて、ステージ後方はぼっかり空きができましたが、弦楽器の数はそのままでした。第1楽章は厚みのある低弦と重々しいクラリネットのソロで始まります。第1主題の終わりのところでアッチェランドをかけるところや第1楽章の終わりでのクレッシェンドを聴くと、ムラヴィンスキーの演奏をふと思い起こしました。しかしそれ以降の表現方法は違っていました。速いテンポに凝縮された力強さを漂わせたムラヴィンスキーに対し、ゲルギエフは若いオケのエネルギーをそのまま放出し、ぐいぐい進んで行きます。休止なしで続けて演奏された第2楽章は、表情豊かで起伏に富んだ演奏でした。弦楽器の序奏の後、ホルンのソロによる長い哀愁のある旋律は、ロシア風のくすんだ音色とは違いますが、完璧な技巧で聴かせました。やがてオーボエのソロと弦を中心にした優しさに満ちた副主題に移り、中間部低弦の響きに乗ったフレーズ(私の大好きなところ!)では、小刻みな低弦がよく響いて聴こえてきました。この後、「運命」を表す主旋律が金管により、けたたましく鳴り響き高揚して行きます。そしてもう一度、主旋律が轟いて、静かにこの楽章は閉じられます。
<ゲルギエフと若い演奏家たちによる燃えあがった熱い演奏>
第3楽章は、これまで通例だったスケルツォではなく、ワルツを用いたことが新機軸と言われています。ゲルギエフによるワルツの味付けは少し濃いめだったような気がしました。楽章の終わりでのワルツに曲冒頭の運命のモチーフがひそかに現れ、現実に引き戻されます。引き続いて演奏された第4楽章は最初に第1楽章冒頭のモチーフが長調に変化した形で弦合奏、次に管合奏で力強く現れ、運命を克服した姿を見せます。主部のアレグロに入る時のテンポは、ムラヴィンスキーの演奏をほうふつとさせました。力強い第1主題と木管の優美な主題が交互に現れ発展し、再現部は弦と金管による壮大なクライマックスとなり、ティンパニの連打、そしてコーダへ。ここでは一気加勢に怒涛のような勢いの演奏で圧倒されました。終わってからの聴衆の熱狂ぶりは近来にないものでした。そういえば、最近の演奏会での聴衆の年齢層は高くなってきていると感じていましたが、この演奏会では若い人も多く、若い演奏家の元気な演奏に熱狂していたのでしょう。あまりこのオーケストラと合わせる時間がなかったようでしたが、ゲルギエフのカリスマ性が発揮され、若い演奏家たちの若々しいエネルギーが燃えあがった熱い演奏でした。(2006.09.27
UP)

《参考にしたCD》
♪ モーツァルト: ファゴット協奏曲 変ロ長調Kv.191
☆ ディートマー・ゼーマン(ファゴット) カール・ベーム指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
[DG 457 719‐2](1973年録音)
♪ ストラビンスキー: バレエ音楽「ペトルーシュカ」
☆ エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮
ソビエト国立交響楽団
[Classical Records CR‐031]
♪ チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 Op.64
☆ エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー交響楽団
[DG CR‐031](1960年録音)
☆ エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー交響楽団
[ALTUS ALT052](1977年10月19日 NHKホール Live録音) |
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