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Review
No.030 for Concert |
2007.7.5 18:45 Aichi
Prefectual Art Center - Concert Hall |
Nagoya
Philharmonic Orchestra - KEN-ICHIRO KOBAYASHI |
| アーティスト: |
名古屋フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会(コバケン・スペシャル
Vol.10) 小林研一郎指揮 |
| 演奏会場: |
愛知県芸術劇場コンサートホール |
| プログラム: |
ブルックナー作曲 交響曲第7番ホ長調
Bruckner:
Symphonie Nr.7 E-dur |
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<興味深かったコバケン・プレトーク>
今回、コバケンさんがプレトークで、演奏するブルックナー第7交響曲について、実際にオーケストラを鳴らして解説をされたことは特筆すべきことです。通常は自分でピアノを弾いて解説されるのですが、今回はこれに加えて本番前のオーケストラを使い、聴衆の理解がより深まったと思います。その中身をご紹介しますと、7番のシンフォニーは彼の交響曲の中では入りやすく、理解しやすいとのことで、ワーグナーの死に伴うテーマを示し、4度の響きが全体を支配するとして、冒頭のメロディーが演奏されました。ワーグナーが楽劇用に作り、この曲で使用されているワーグナーテューバはテューバとホルンの合いの子で、マウスピースを使用し、ホルン奏者が吹くことになっているそうで、その部分を実際に吹いてもらいました。2楽章の終わりの部分と第1楽章、第4楽章は同じテーマであること、第4楽章ではオルガンのような響きを聴いてほしいこと、第3楽章スケルツォは祈りから地獄落ちを表している?といった話が次々に出てきました。カラヤンのリハーサルを見ようと、トイレに隠れ、練習が始まったので出てきたら、カラヤンは指揮せずに聴いているだけ。その時
、捕まって放り出され、それこそ地獄落ちだったとコバケンさんは聴衆を笑わせました。
<ブルックナーの出世作となった交響曲第7番>
ブルックナーが、ウィーン大学で和声学と対位法の講師を勤めながら第5番の交響曲を作曲、改訂してから5年が経ち‥収入も安定し、交響曲第6番や「テ・デウム」などを作曲し、創作意欲が非常に高まっていた頃にこの交響曲第7番は生まれました。それまでオルガン奏者としては知られていましたが、交響曲では鳴かず飛ばずだったブルックナーは、この第7交響曲の成功によって認められるようになりました。まず第3楽章スケルツォから作曲が始められ、1883年9月に完成しています。
[第1楽章 アレグロ・モデラート] 霧が立ち込めたような(「原始霧」とも呼ばれる)微かなヴァイオリンのトレモロを背景にチェロを主体に雄大な楽想の第1主題が出てきます。この主題は遥かに山々を仰ぎ見るように「憧れ」や「祈り」を描いたように思われ、この曲の原主題となっています。低弦のトレモロの上に再び提示され、最初の頂点に達します。次に半音階的な上昇とともに第2主題がオーボエとクラリネットにより現れ、弦楽器に受け渡され、第1ヴァイオリンを中心にゆるやかに上昇していきます。金管も加わって最高潮に達しようとする瞬間、急に音量を弱めます。弦のユニゾンにフルートとクラリネットがゆるやかな第3主題の基本線を辿ります。クレッシェンドして進んでいき、金管によるファンファーレが響きます。その後、明るく穏やかな気分のうちに提示部の終結部が形づくられます。展開部では各主題が順次現れた後、第1主題が突然激しい響きで出てきます。再現部は切り詰められ、コーダは、第1主題後段の冒頭部分を素材として「非常に厳かに」始められます。最後は巨大なクライマックスを形づくり、ティンパニの連打により結びとなります。
[第2楽章 アダージョ(非常に厳かに、そして非常にゆっくりと)] この楽章の終わり近くまで書き進めていたブルックナーは、尊敬するワーグナーが亡くなったことを知り、巨匠のために心から葬送の音楽を書いたと言われています。構成はA‐B‐A'‐B'‐A"の5部形式となっています。第1主題Aは、テューバを主体とした重々しい葬送風の音楽で始まり、弦を中心としたゆったりとした旋律が奏されます。この主題の後半には、彼の「テ・デウム」から「主よ、御身により頼みます」の二重フーガにも使われた浄化するような楽句が現れます。悲しみに満ちた箇所が反復され、テューバの響きによって沈静して行きます。ここでテンポがモデラートに変わり、第2主題Bでは、ヴァイオリンにフルートが加わって透明感のある美しい響きが聴かれます。次の第1主題によるA′の部分は、ヴァイオリンによる新しい対旋律を添えた形で現れます。最後のA″ではヴァイオリンの上行音形が繰り返され、金管のコラールで大きな頂点に至り、フルートのピアニシモによって収束します。第2主題Bがやや短く再現され、伸びやかな旋律が奏でられます。そして第1主題が弦楽器により厳かに奏され、コラール的な奥深い展開の後、最頂点に達します。その後、4本のワーグナーテューバにより重厚で荘重な追悼のコラールが奏でられます。
[第3楽章 スケルツォ(非常に速く)]
三部形式。小さなモティーフが繰り返され、金管群は徐々に音量を増してクライマックスに達したところで休止します(ブルックナー休止と呼ばれるもの)。トリオでは、弦楽器が、のどかで牧歌的な雰囲気を醸し出しています。木管の寂とした調べの後、スケルツォが再現されます。このスケルツォの主題は、朝の雄鶏の鳴き声「kikeriki(コケコッコー)」からヒントを得たそうですが、そう言われてみると、なるほどと思います。
[第4楽章 フィナーレ(動きを持って、しかし速くなく)] 第1楽章冒頭の第1主題に由来する楽句に符点のリズムが加わって再現されます。チェロとコントラバスにより主題が反復され、フルートとクラリネットの掛け合いの後、コラール風の第2主題が弦楽合奏で続きます。突然、第1主題から導き出された第3主題が金管によって力強く出てきます。短い展開部を経て、これまでとは逆の第3→第2→第1の順に主題が再現されていきます。コーダでは第1主題が幾重にも積み重なり、力強く響き渡って曲は閉じられます。
<第2楽章で打楽器は有りや無しや>
第2楽章の後半部でワーグナーテューバが登場する前の壮大な頂点に達するところ(177小節)があります。練習番号がワーグナーのイニシャルWで表してあるところで、ティンパニ、トライアングル、シンバルを用いないのが[ハース版]、用いるのが[ノウ゛ァーク版]です。どうしてこのような違った楽器編成になったのでしょうか。ブルックナーは、弟子の主張を入れ、この3打楽器を追加したらしいのですが、さらにそこに
giIt nicht(無効)という文字が鉛筆で書き入れられているのです。ハースはこの記入をブルックナーのものと判断し、3打楽器のパートがないものとしています。これに対してノウ゛ァークは、「無効」という筆跡がブルックナーのものではないと判断し、3打楽器のパートを取り入れています。またシンバルとトライアングルという色彩的な音を出す楽器を入れずに、ティンパニだけを加える指揮者(インバルやヘルウ゛ェッヘ)もいます。コバケンさんが選んだのは3打楽器の入った[ノウ゛ァーク版]でした。
<「ブルックナーのもっとも優美な言葉」とオルガン演奏の技法>
朝比奈さんが、この7番のシンフォニーを「ブルックナーのもっとも優美な言葉」と評されているように、この作品はその優美さが特徴となっています。しかし、長大で重厚な前半に比べ、後半がやや軽いという構成からか、代表作とは言えないという人もいます。特に第4楽章が、交響曲の終楽章にしては一貫性がなく、やや物足りない感じがするからでしょう。しかしながら、ここではオルガン奏者だったブルックナーが、その即興演奏を繰り広げていると考えれば、納得がいきます。ペダルを全開にした威圧的な轟音と軽妙な弱音を際立たせ、既に出てきた主題を変奏したり、上下を逆にしたりといったオルガン演奏の技法が管弦楽において縦横に駆使されているからです。
<掛け持ちでも1回きりでも楽員は大変?>
名古屋フィルの演奏ですが、ヴァイオリンは美しい響きで、その好調さを持続していました。またコントラバス、チェロの低弦が特にピチカートの時に、よく響いているように感じました。しかし、大阪フィルのようなオルガン風の分厚い響きを出すまでには道程は長いと思われます。金管群は大きなミスもなく、ステージに向かって左手奥に配置されたホルンと右手奥のワーグナーテューバが健闘していました。そのワーグナーテューバの奏者はさぞ忙しかったことでしょう。コバケンさんのプレトークにありましたが、一部ホルン奏者は掛け持ちのため、第1楽章ではステージ左側(ホルン)へ、第2楽章は右側(ワーグナーテューバ)へ、後半の楽章は再び左側へと場所移動のため行ったり来たり。その度にステージ脇から裏を回って、もう片方の脇から出て来なくてはいけません。シンバルとトライアングルを叩く方も大変ですね。ノヴァーク版ですから、第2楽章の後半部で1回だけ、シンバルとトライアングルが鳴る訳で、この時の演奏のためだけに、ティンパニの横にずっと座っていなくてはいけないのですから‥。
<コバケンさん人気の秘密>
万雷の拍手に応え、コバケンさんは、指揮台の周りにいる弦楽器の首席及び準首席奏者全員と握手した後、ホルン、トロンボーン、木管、打楽器の首席と握手したり、立たせたり‥。さらにパートごとに立たせて、オーケストラに感謝の意を表します。こういうところがオーケストラへの気配りかと思います。それから聴衆に対するサービスも忘れていません。コバケンさんは鳴り止まぬ拍手を制して、次回のコバケンスペシャルについて一言。「今回はブルックナーなので、アンコールはやる気になりませんでしたが、次回は今回できなかった分、必ずアンコールを行うことを約束しますので、是非足を運んでください。」と抜かりなくPRして、聴衆を笑わせました。コバケンさんのこうしたサービス精神、気さくで親しみやすいところやプレトークの上手さが人気の秘密なのでしょう。
(2007.09.17 UP)
《参考にしたCD》
♪ ブルックナー 交響曲第7番 ホ長調
☆ 朝比奈 隆(指揮)大阪フィルハーモニー交響楽団<ハース版>
[Victor VDC-1214](1975年10月12日
ライブ録音、聖フローリアン マルモア・ザール、リンツ)
※ ブルックナーゆかりの聖フロリアンでのライブ録音で、長い残響によって各楽器がよくブレンドされ、陶酔の境地へと誘います。第2楽章が終わった直後、朝比奈さんには神の恩寵のようにきこえたという鐘の音が微かに聞こえます。
☆ オイゲン・ヨッフム(指揮)アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団<ノヴァーク版>
[Altus ALT015/6](1986年9月17日
ライブ録音、昭和女子大学 人見記念講堂、東京)
※ ヨッフムが亡くなる半年前のライブで、コンセルトヘボウ管の柔らかい響きを駆使し、美しくも味わい深い演奏を繰り広げています。
☆ クルト・ザンデルリンク(指揮)シュトゥットゥガルト放送交響楽団<ハース版>
[hanssler CLASSIC
CD 93.027](1999年12月 ライブ録音、リーダーハレ、シュトゥットゥガルト)
※ ザンデリンクが78歳の時のライブで、緻密かつ悠容たる演奏を繰り広げ、特に前半の楽章は出色で堪能させられます。
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