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 Review No.037  for Concert
 2008.1.26  18:45  Aichi Prefectual Art Center - Concert Hall
 NHK Symphony Orchestra  -  HERBERT BLOMSTEDT
                   CHRISTIAN GERHAHER(Br)
アーティスト: NHK交響楽団 名古屋定期公演  クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)  ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
演奏会場: 愛知県芸術劇場コンサートホール
プログラム前半: マーラー作曲 さすらう若人の歌
                        Mahler: Lieder eines fahrenden Gesellen
プログラム後半: シューベルト作曲 交響曲第8番ハ長調 D.944 「ザ・グレート」
                        Schubert: Symphonie Nr.8 C-dur D.944
<N響名古屋演奏会で想い出すのは‥>
愛知県芸CHで準備中のN響(公演当日)
年に一度のN響名古屋定期演奏会は、毎年1月〜4月頃に行われ、何度か聴きに行きましたが、印象に残っているのは、2002年4月、スクロヴァチェフスキーによるブルックナーの交響曲第7番、2001年1月、準・メルクルによるメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」といったところでしょうか。残念だったのはスヴェトラーノフの指揮した1999年のベートーヴェン交響曲第6番「田園」が聴けなかったことです。・・というのは、その当時、2月には朝比奈さんと大阪フィルが毎年名古屋へ来られ、堂々たる演奏を聴かせていました。この年、2月20日がN響、21日が大フィルと演奏会が続き、朝比奈&大フィル(ドヴォルザーク:交響曲第8番、ムソルグスキー/ラヴェル編「展覧会の絵」)を聴きに行き、スヴェトラーノフ&N響「田園」の他、プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番(ピアノ:ペトロフ)は諦めてしまったのですが、もうこの組み合わせで聴く機会はなくなってしまいました。今思うと、無理してでも両方とも聴けばよかった・・と後悔しています。更に時は遡って、1974年10月22日、名古屋市民会館で聴いたジャン・フルネ指揮N響の演奏会は、今もはっきり記憶に残っています。その時のプログラムのひとつがドビュッシーの「小組曲」で、その優雅な演奏は忘れられません。(他に当時、ウィーン・フィル首席クラリネット奏者のアルフレッド・プリンツをソリストに迎えたモーツァルトのクラリネット協奏曲やデュカスの「魔法使いの弟子」、ラヴェルの「ボレロ」といった曲が演奏されました。)


<ブロムシュテットの指揮で想い出すのは‥>

ブロムシュテットを生演奏で聴いたのは1978年4月7日、シュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)の来日公演でベートーヴェンのエグモント序曲、交響曲第6番「田園」、交響曲第7番というプログラムでしたが、シュターツカペレ・ドレスデン独特の典雅な響きが紡ぎ出されていたことが想い出されます。その後、1988年12月上旬、ニューヨークからボストンへとアメリカ東海岸を回った時、ブロムシュテット率いるサンフランシスコ交響楽団の演奏旅行と行程が重なったようで、同じプログラムを2回聴くことになりました。曲目はヘンデルの「王宮の花火の音楽」、カーターのオーボエ協奏曲(オーボエ独奏はハインツ・ホリガー)、そしてブラームスの交響曲第4番でした。ニューヨークではカーネギーホールのいちばん天井に近い席で聴いたことをはっきり覚えています。その後に訪れたボストンでは、残念ながらボストン交響楽団の演奏会がなくて、ビジターのブロムシュテット、サンフランシスコ響の演奏会がボストンシンフォニーホールで予定されていました。カーネギーホールとまったく同じプログラムでしたが、ボストンシンフォニーホールではどんな響きになるか確かめたい一心で、聴きに行きました。世界に冠たるホールで聴いたブラームスの交響曲第4番は忘れられないものとなりました。ブロムシュテットさんの指揮したサンフランシスコ響は厚い響きを出していました。その時以降、ブロムシュテットさんが指揮する生演奏を聴く機会はずっとなかったのですが、今回は2年ぶりのN響客演となり、名古屋ではマーラーの「さすらう若者の歌」とシューベルトの「ザ・グレート」が聴けるとあって期待に胸を膨らまして聴きに行きました。


<失恋から生まれたマーラー「さすらう若者の歌」>

1883年、マーラー23歳の時、自作の詩に作曲した3管編成の管弦楽伴奏つきの歌曲集です。4曲からなっており、恋する若者の想いが感傷的につづられた歌詞に甘美な音楽が付けられています。マーラーは着任したカッセル宮廷歌劇場の専属歌手だったヨハンナ・リヒターに恋焦がれたのですが、その恋は実りませんでした。その失恋からマーラーは自作の詩を書いたと言われています。現行版はマーラー自身が1885年に手を加えたもので、公的な初演は1896年3月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団をマーラー自身が指揮して行われました。歌曲集の主人公は、シューベルトの《美しき水車小屋の娘》や《冬の旅》と同様に、ロマン主義の時代に好まれた遍歴する職人です。自己を確立する途上にある若者が、失恋の痛みを抱きながら美しい自然のなかを放浪する様子が描かれています。なおマーラーの交響曲第1番「巨人」の第1楽章主部の素材にこの歌曲集の第2曲「今朝、野原を通ったときに」の旋律が、そして第3楽章の中間部には第4曲「愛しいひとの碧いふたつの瞳」の旋律が使われていますので、身近に感じられます。

[曲の構成、内容]

第1曲「愛しいひとが嫁ぐ日は」 愛しいひとの婚礼の日に、さすらいの旅に出る若者の気持ちが、可愛い花や鳥と対照的に歌われます。トライアングルとハープに彩られ、クラリネットの旋律が中心の主題となっています。その主題の変形により始まる歌は、愛する者を失った若者の悲しみを表しています。「青い花よ、萎れるな」で中間部に入り、ヴァイオリンソロも入り、木管が小鳥のさえずりを表します。「鳥よ、歌うな」で元の旋律が戻ってきて、もの寂しく終ります。

第2曲「今朝、野原を通ったときに」 若者は、自然の中につかの間の安らぎを得ますが、最後に再び現実に引き戻されます。曲は、さわやかな朝の気分で始まり、この世の美しさを讃える小鳥や花の朝の挨拶が明るく歌われ、明るく伸びやかなオーケストラの伴奏を挟んで、同じ旋律で喜びを歌っていきます。歌詞の最後の2行に当たるところで、テンポが遅くなると、あらゆる幸せから取り残された悲しみの表情に変わり、最後はヴァイオリンソロが寂しく音を響かせます。

第3曲「僕の胸には灼熱の刃が」 青年の内なる彼女の像が妄想のように襲いかかり、苦痛と激情を抑えることができない様子を描いたドラマティックな曲です。激しい前奏に続いて、胸を焼きつけるような苦痛が歌われます。「夜となく昼となく」で大きな盛り上がりを示した後、テンポが次第に遅くなります。空を仰ぎ見た若者は、彼女の青い瞳(現実の世界)から逃れるために現世を捨て、彼岸への憧憬を歌います。深い歎きのうちに「彼女の銀のような笑いの声を聞くと、柩に横たわりたい」という願いが歌われます。それも鎮まって、最後は下降する弦の3連譜により消え入るように閉じられます。

第4曲「愛しいひとの碧いふたつの瞳」 青い瞳に追い立てられるようにして放浪の旅に出た若者が安息の地を見出だし、諦観する情景が描かれています。ここには「神秘的な、憂鬱な表情を持って」に「感傷なしに」とのマーラーの指示があり、前奏もなく、悲痛な感情を抑えて歌は始まります。ティンパニによる葬送行進曲風のリズムがつきまといますが、やがてハープの音にのって夢見るような旋律が歌われます。木管、ヴァイオリンソロ、ホルンが柔らかく伴われます。さすらいの旅に出た若者は街道沿いの菩提樹の陰で眠りについたのです。最後はフルートが葬送曲の余韻を漂わせながら響いて曲を閉じます。


クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)<魅力的な歌声のゲルハーヘルと左側から響くコントラバスの低音>

拍手で迎えられ、ステージにN響の団員が現れます。ブロムシュテットさんの時は、N響は対向配置だということを SINFONAIR の管理人から聞いていましたので、その響きがどうなるか興味津々でした。ステージに向かって左側から第1ヴァイオリン12、コントラバス4、チェロ6、ヴィオラ10、そして第2ヴァイオリン10と、弦楽器は小編成ですが、フルート3、ピッコロ1、オーボエ2、イングリッシュ・ホルン1、クラリネット3、バス・クラリネット1、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3に打楽器はティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングル、グロッケンシュピール、ドラ、ハープと多彩です。オーケストラが勢揃いし、チューニングが済むと、間をあまり置かずに長身の2人が登場。指揮台は置いてなくて、ブロムシュテットさんは、バリトン歌手の右側でやや左斜めに譜面台を向けて指揮棒なしで曲を始めました。ゲルハーヘルさんは1969年生まれでディートリヒ・フィッシャー=ディースカウに師事したドイツのバリトン歌手です。朗々と響き渡る声ではありませんが、味わいに満ち魅力的で、弱々しくナイーブな若者の気持ちをよく表現しているように思いました。さすがシューベルトのリート歌手として一躍頭角を表わしたバリトンですね。ただ、広いコンサートホールではあまり声が通らなかったような気がしました。(・・録音では歌手の音量が大きく拾われているので、そう感じられるのでしょう。)第2曲「今朝、野原を遠ったときに」でハープとコントラバスのピチカートにのって歌うゲルハーヘルさんの優しい声は印象的でした。オーケストラでは、対向配置により左側から響いてくるコントラバスの重いピチカートの音が印象的でした。木管の音も太く大きく聞こえてきましたが、とくにクラリネットに存在感がありました。何度か出てくるコンサートマスターのヴァイオリンソロの音色やヴァイオリン群の響きは特筆するほどではありませんでした。しかしトータルでは、さすが日本のオーケストラの老舗ですね。安定していました。最後は静かに消え入るように終わるのですが、ブロムシュテットさんが、ゆっくりと手を下ろしてから拍手が起こり、その間、一時の静寂を味わえたことは神様に感謝しなくてはいけません。


<交響曲第7番→第9番→第8番と番号が変わってきたシューベルトの「ザ・グレート」>


シューベルトは友人宛の1824年3月31日付の手紙で大きな交響曲を作曲したいという希望を述べ、翌年、ウィーン楽友協会代表委員会の準委員に選ばれ、同協会主催のコンサート用に新作の交響曲を書き始めました。これが「ザ・グレート」で、同じ調性を持つ交響曲第6番と区別するため、こう呼ばれています。この交響曲の寄贈を受けた楽友協会は、練習の後、この作品が長大で難しすぎるためか演奏会にかけることを止めてしまいました。シューベルトの兄フェルディナントのもとに眠っていたこの「ザ・グレート」の自筆譜を発見したのは、シューベルトの熱烈な支持者だったシューマンで、1939年元旦のことでした。彼は譜面をライプチヒのメンデルスゾーンに送るように頼み、その年3月21日、ライプチヒゲヴァントハウスでメンデルスゾーンの指揮によって「ザ・グレート」は初演されました。これまでこの交響曲は、彼がその生涯を閉じた1828年の3月に書きはじめられ、亡くなる11月までに仕上げられた‥と長い間、考えられていました。それは現存する自筆譜に記入されていた1828年という数字が根拠となっていました。ところがその“1828”の最後の“8”は、誰かが“5”を“8”に変えた形跡のあること、また「ザ・グレート」のパート譜に使われている五線譜が1826年頃に作られていることが判り、最近では、「ザ・グレート」は1825年3月から1826年にかけて作曲されたと考えられています。ただし現存する自筆総譜には様々な訂正が加えられていて、最終的にシューベルト自ら“8”を上書きした可能性も捨てきれないようです。こうした研究によって交響曲の番号も刻々と変わってき「未完成」は、発見が「ザ・グレート」より遅かったことや交響曲の形式上で“未完”ということから、第8番ということになっていました。その後、シューベルト研究が進み、残されたスケッチの中の交響曲ホ長調(D.729)が比較的完成度が高いところから、これを1曲と数えて第7番とし、以下、作曲年代順に《未完成》を第8番、「ザ・グレート」を第9番とするのが一般的になってきました。ところが、めったに演奏されない交響曲ホ長調を入れるのは無理があり、1978年に刊行されたドイッチェの『シューベルト新作品目録』では、“スケッチ”に過ぎない交響曲ホ長調を削除し、空いた第7番に「未完成」、第8番に「ザ・グレート」を置いています。今回のN響演奏会の曲目表示も、交響曲第8番となっています。このように「ザ・グレート」は第7番→第9番→第8番とくるくる番号が変わってきたわけですが、第8番というと、長い間「未完成」でしたから、どうしても違和感を感じます。作曲者が付けた訳ではありませんが、その形態、曲想によくマッチした「ザ・グレート」という通称によって分かれば、番号は何番でもいいのかも知れません。

[曲の構成、内容]

第1楽章 アンダンテ−アレグロ・マ・ノン・トロッポ、ハ長調 序奏つきのソナタ形式 長い序奏は、大交響曲を書こうとしたシューベルトの意気込みを感じさせます。2本のホルンが冒頭でいきなり主題を吹奏するのは、当時としては画期的なことで、その後、シューマンの交響曲第1番《春》やメンデルスゾーンの交響曲第2番《賛歌》の冒頭にこの形が使われています。この主題の動機は以下の楽章の主題にも利用され、全曲を有機的に結びつけています。ブロムシュテットさんは、この楽章についてこう語っています。「アンダンテ(歩くような速さ)で山の中をさまよい歩くようです。何か遠くのものに憧れるロマンチストの典型で、境界を越え、遠い異国の地を夢み、心理的にも新しい経験や感覚を求めます。シューベルトはそんな曲をつくるのに成功したのです。冒頭の旋律はこの楽章の最後で勝ち誇って戻ってきます。オーケストラが壮大なアーチを描くのです。」

第2楽章 アンダンテ・コン・モート、イ短調、A+B+A+B+コーダの形式 オーボエが奏する哀愁を帯びた主旋律の美しさは印象的で、激しい動機を織り交ぜることによって、そのメロディーラインの美しさをさらに際立たせています。短調と長調とが頻繁に変わることから生まれるニュアンスが絶妙で、シューベルトの面目躍如たる緩徐楽章です。この楽章についてブロムシュテットさんは次のように語っています。「旋律の驚異です。イ短調。しかしここでハ長調の和音の光がさすのです。2小節は暗くなるのですが、3小節からは新しい色彩です。憂鬱から悲劇へ、甘美さ、そして個人的なものへと絶えず変わっていきます。そこが感動的なのです。そしてフレーズが2つの音で終わります。いよいよ素晴らしいクライマックスへ。この2つの音、誰かが彼を脅かしているのです。喉元をつかんで、お前は死ぬかもしれない。そして突然、音が止まります。まるで1人残らず死んでしまった感じです。そして同じ音から生気が戻ってきます。実に劇的で感動的な楽章です。」

第3楽章 アレグロ・ヴィヴァ−チェ、ハ長調 スケルツォですが、農民舞曲に優美なレントラーの味わいが加わって、どこかのどかな雰囲気があります。中間部は木管楽器が耽美的なハーモニーを聴かせ、ほのぼのとした気持ちになります。

第4楽章 アレグロ・ヴィヴァ−チェ、ハ長調。ソナタ形式 第1主題の歓びに満ちた調べは、聴く者に躍動感を感じさせます。同一のリズムと動機を反復しながらコーダに突き進む曲想はベートーヴェン的とも言えますが、この後、ブルックナーの交響曲に引き継がれていったものでもあります。コーダは、第1楽章のそれと同様に聴く者の気持ちを高揚させます。ブロムシュテットさんはこう語っています。「最終楽章はとても速いブレスト。とても超絶技巧的です。でも一番心に残るのは2つ目のテーマでしょう。1つの音をもとに展開します。ウィーンのコーヒーハウスにシューベルトが友人たちと座って、一緒に歌っているんです。ワインも少し入って上機嫌。いつまでも続く、永遠に‥。いつまでも聴いていたい美しさです。そしてここにロマンチスト、シューベルトがいるんです。境界を超越して永遠に続く音楽を可能にしたのです。決して止まらない音楽です。でも、交響曲は確かに終わります。終わると、もう一度聴きたくなる、それほど美しいのです。」 最後のところで、シューベルトは意味不明のディミヌエンドの指定をしていますが、ほとんどの場合、指揮者は、これを無視して演奏しています。(1996年2月16日、朝比奈・大阪フィルの名古屋演奏会では、チェリビダッケと同様に、スコアの指示どおりディミヌエンドで演奏していました。)


<速いテンポの演奏ながら、この曲の白眉である第2楽章、精力的な指揮により熱意が加わった第4楽章>


編成はステージに向かって左側から第1ヴァイオリン16、コントラバス8、チェロ10、ヴィオラ14、第2ヴァイオリン14と弦楽器の数が増え、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ1となりました。80歳になったブロムシュテットさんは指揮棒を持って軽やかに指揮台に上がります。第1楽章冒頭ホルン2本のユニゾンから速いテンポで入り、その速さで進んで行きます。ホルンが音を外したのは大したことではありませんが、不満なのはこの楽章のコーダのテンポです。ブロムシュテットさんはアッチェランドをかけてきたのですが、性急過ぎて味わいに乏しいものになってしまいました。ベーレンライター版使用のため、速いテンポになったようですが、ここは、何と言ってもフルトヴェングラーの絶妙なテンポ感の呪縛から逃れられないところです。

第2楽章はこの演奏での白眉。オーボエを始め木管群は絶妙なアンサンブルを聴かせ、第2主題が出て来るところで弦にクラリネットが加わるメロディラインの美しさは際だっていました。その後ピチカートが響いてチェロにオーボエが加わり、夢見るかのようでした。最後のオーボエにチェロが掛け合い、弦の強奏、ホルンと木管が鳴って静かに終わるところはまさに至福のひととき‥。

第3楽章では対向配置により、左側奥のコントラバス→左側手前の第1ヴァイオリン→右側手前の第2ヴァイオリン→右側奥のヴィオラ→中央左側のチェロと楽器が移って行くのが楽しめました。中間部のトリオに期待したのですが、心をときめかすまでには至りませんでした。

第4楽章ではN響の高い合奏力にブロムシュテットさんの精力的な指揮による熱意が加わり、見事な演奏となりました。左側〜真ん中のチェロとコントラバスの厚みのある低音が響きます。コーダは一気呵成に盛り上がって終わりましたが、「天国的な‥」と形容されるように、このままずっと続くようなイメージが残りました。シューベルトがコーダをディミヌエンドで終えようとした意図に繋がっているのではないかと思います。

盛大な拍手によりステージに現れたブロムシュテットさんは、まず指揮台の回りの弦楽器奏者のひとりひとりと握手をしました。拍手に迎えられステージに現れ、次にホルン奏者を立たせ、オーボエ奏者のところへ行って握手し、その後もフルート、クラリネットと握手は続きました。握手ができない位置にいる金管、ティンパニ、弦楽器の奏者を立たせます。盛大な拍手はなり止まず、ブロムシュテットさんは自分でも拍手をして、オーケストラを讃えていました。N響はアンコールをやらない掟があるようで、演奏会の時間は長くなく、8時30分前には終了しました。ブロムシュテットさんが速いテンポで進めたので、老舗オーケストラも最初は戸惑ったようですが、そのため力の入った演奏を繰り広げるのに繋がったように思えました。名古屋では、年に1回だけのN響の演奏会ですが、権威、知名度のあるものを好むこの地域の聴衆に、大きな満足感を与えて終りました。


N響定期公演プローベのブロムシュテット(2008年1月22日)<ブロムシュテットが語る健康の秘訣と音楽が導く豊かで幸福な人生>

後日、NHK教育テレビのN響アワーで、ブロムシュテット、N響によるシューベルト「ザ・グレート」(第3楽章は番組時間枠の都合でカット)が放映されました。ブロムシュテットさんは「ザ・グレート」の楽章ごとにそのメロディを口ずさみながら解説をしました。(その語りの内容は[曲の構成、内容]で紹介したところです。)最後に80歳を越えても元気に活躍されている健康の秘訣は何か?という質問にこう答えていました。「天からの授かり物なんです。もちろん気をつけて生活しています。タバコは吸いませんし、お酒もコーヒーも飲みません。不健康なのは退屈していることです。何もすることがない、何も面白くない、何にも驚かない、何にも興味がわかない。ただ退屈というのは健康に良くないのです。何かに興味を持つことです。音楽、美術、スポーツ、何かに興味を持つことです。頭と心、それに体を忙しくすることが大切です。音楽は不老不死の妙薬です。頭と心と体を刺激します。音楽は人を完結させるのです。そして音楽は想像の中にだけあるのではありません。音楽が面白いのは人生を映しているからです。小節の1つ1つが自分の人生経験を映すと同時に他の人たちの人生経験も共有できるのです。音楽は人を豊かにする活動なのです。聴衆の皆さんで、退職されたような方なら、楽器を始めてはいかがでしょう。人生の新しい素晴らしさを発見できますよ。1人ではなく、他の人たちと一緒にやることです。そうすれば、豊かで幸福な人生になりますよ。」生き生きとして、前に進む力がみなぎっているブロムシュテットさんの信条が込められたメッセージだと思います。


2008.03.23UP


《参考にしたCD等》


♪ マーラー: さすらう若者の歌


☆ ラファエル・クーベリック(指揮)バイエルン放送交響楽団、ディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウ(バリトン)
[DG G-90294](1968年)
☆ ジェフリー・テート指揮イギリス室内管弦楽団、ベルント・ヴァイクル(バリトン)
[EMI 7243 5 69862 2 0](1991年)


♪ シューベルト: 交響曲第8番 ハ長調 D.944 「ザ・グレート」


☆ ウィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
[DG 447 439-2 ](1951年11〜12月モノラル録音、イエス・キリスト教会、ベルリン)
☆ カール・ベーム(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
[DG POCG-](1976年3月19日ライブ録音、NHKホール)
☆ 朝比奈 隆(指揮)大阪フィルハーモニー交響楽団
[CANYON PCCL-00541](1996年2月16日ライブ録音、愛知芸術劇場コンサートホール)
☆ ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)シュターツカペレ・ドレスデン
[TKCC-70264](1981年3月23〜27日録音、ルカ教会、ドレスデン)

フルトヴェングラー盤は「ザ・グレート」の名前に相応しく、天国的広がりを持った雄渾な演奏で、今もこの曲に於いては最高峰に位置しているものです。

ベーム盤はウィーン・フィルとの初来日公演のライブ録音で、私にとっても初めて聴いたウィーン・フィルの生演奏で、優雅な弦の響きと懐かしいオーボエの音色に我を忘れた日が想い出されます。

朝比奈盤はベートーヴェンとブルックナーの交響曲がこの曲で繋がっていることを知らしめてくれる剛毅な演奏で、名古屋に於いてこのような名演を聴くことができたことに感謝しています。

ブロムシュテット盤は今回のN響との演奏のように速いテンポではなく、極めてオーソドックスでシュターツカペレ・ドレスデンのノーブルな響きを活かした演奏です。


†  『ブロムシュテット「ザ・グレート」について語る』 NHK教育テレビ「N響アワー」 (オンエア: 2008年3月2日 21:00〜22:00)


根津昭義氏(NHK交響楽団・第2ヴァイオリン奏者)のウェブサイト(HP)から 「昭義のひとりごと(2008年1月分)
 
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